EtherNet/IP In-cabinet Solutionとは?制御盤の配線を最大80%削減する新しいアーキテクチャ

EtherNet/IP In-cabinetとは、Rockwell Automationが2025年5月にリリースした、制御盤(コントロールパネル)内部の配線をEtherNet/IPネットワークに置き換える新しいアーキテクチャです。従来のハード配線では、モータースターター・押しボタン・保護装置などを個別にI/Oモジュールへ配線していましたが、本ソリューションではシングルペアイーサネット(SPE)技術を使った1本のケーブルで電力とデータを同時に伝送し、配線時間を従来比最大80%削減します。Allen-BradleyのLogixエコシステムとシームレスに統合でき、制御盤のスマート化・省スペース化・保守効率化を同時に実現します。
目次[非表示]
- 1.制御盤の従来の課題
- 2.EtherNet/IP In-cabinet Solutionの仕組み
- 3.導入による削減効果
- 4.対応デバイス
- 5.Logixエコシステムとの統合
- 6.どんな企業・設備に向いているか
- 7.よくある質問 (FAQ)
- 7.1.Q1. EtherNet/IP In-cabinet solutionとは何ですか?
- 7.2.Q2. シングルペアイーサネット(SPE)とは何ですか?
- 7.3.Q3. 配線時間はどれくらい削減できますか?
- 7.4.Q4. 何台のデバイスまで接続できますか?
- 7.5.Q5. Allen-Bradley以外のPLCと組み合わせられますか?
- 7.6.Q6. 既存の制御盤に後付けで導入できますか?
- 7.7.Q7. 対応デバイスはどんなものがありますか?
- 7.8.Q8. FactoryTalkと連携してデータを可視化できますか?
- 7.9.Q9. Studio5000で設定・診断できますか?
- 7.10.Q10. 盤内スペースの削減効果はありますか?
- 7.11.Q11. CompactLogixと組み合わせた場合も使えますか?
- 7.12.Q12. 導入の相談はどこにすればよいですか?
- 8.まとめ
制御盤の従来の課題
製造現場の制御盤は長年、以下のような課題を抱えてきました。
膨大な点数の個別配線
モータースタータ―・押しボタン・過負荷リレー・保護装置など盤内の各デバイスを、1点ずつI/Oモジュールや中継端子台へ個別に配線する必要があります。デバイスが増えるほど配線作業は複雑化し、工数・ミスのリスク・盤のスペースが比例して増大します。
データの不可視性
従来のハード配線では機器の動作状態(ON/OFF)以外の情報をリアルタイムで取得することが難しく、設備のリアルタイム監視や予兆保全への活用が比例して増大します。
立上げ・保守・変更に時間がかかる
配線図通りに結線を確認する工程やトラブルシューティングで膨大な工数が発生します。レイアウト変更や仕様追加のたびに配線をやり直す必要があり、設備改造のコストが高くなりがちです。
EtherNet/IP In-cabinet Soutionはこれらの課題に対し、盤内の通信をEtherNet/Ipネットワークに統一することで根本から解決するアプローチです。
EtherNet/IP In-cabinet Solutionの仕組み
シングルペアイーサネット(SPE):1本で電力とデータを伝送
本ソリューションの技術的な革新がシングルペアイーサネット(Single-Paor EtherNet : SPE)です。1本の7芯フラットケーブルで通信信号と電源供給を同時に伝送するため、従来の複数ケーブルを束ねた配線を1本に集約できます。
このケーブルがマルチドロップバス方式で盤内を縦断し、各デバイスの通信インターフェースに接続することで、最大40ノードまでのデバイスをネットワーク上に統合できます。ODVAの使用では、盤内ネットワークのケーブル最大長は25メートルと規定されています。
EtherNet/IPゲートウェイ:盤内ネットワークとLogixをつなぐ
ゲートウェイが盤内SPEネットワークとAllen-BradleyのLogixコントローラ(ControlLogix・CompactLogixなど)をつなぐ中継ポイントとして機能します。ゲートウェイにはFirst Power Tap(ファーストパワータップ)が内蔵されており、盤内各デバイスへ電力(ネットワーク電源NP:4A、スイッチ電源SP:4A~8A)を供給します。
マルチドロップバストポロジー
各デバイスが1本のケーブルに数珠繋ぎで接続されるマルチドロップ構成により、デバイスあたりのインターフェース数と配線の複雑性を大幅に低減できます。新しいデバイスを追加する際も、既存の配線を大きく変更することなくケーブルに接続するだけで済みます。
導入による削減効果
EtherNet/IP In-cabinet Solutionを導入した場合、従来のハード配線方式と比較して以下の削減効果が報告されています。
工程 | 削減率 |
|---|---|
配線時間 | 最大80%削減 |
組立時間 | 65%以上削減 |
エンジニアリング時間 | 約30%削減 |
テスト時間 | 約50%削減 |
盤サイズ | スペース削減が可能 |
ブラジルのシステムインテグレーターVolgaは、EtherNet/IP in-cabinet solution導入後「組立時間が65%以上削減され、スターターとパネルオペレーターの配線を1時間余りで完了できるようになった」と報告しています。
ポイント
配線時間の削減は納期短縮と直結します。盤メーカーやOEMにとっては製造コスト削減、エンドユーザーにとっては立上げ期間の短縮という形で効果が表れます。
対応デバイス
EtherNet/IP In-cabinetが接続・ネットワーク統合できるデバイスは順次拡大されています。2026年5月の最新拡張で対応範囲が広がりました。
デバイスカテゴリ | 対応デバイス例 |
|---|---|
モータースタータ― | スターター(直入れ・スターデルタ等) |
操作機能 | 押しボタン・パイロットライト(カスタマイズ可能カラー対応) |
モーター保護 | E100電子過負荷リレー、140MEモータ保護用回路遮断機(2026年5月追加) |
電磁接触器 | 100-Eコンタクタ(通信モジュール経由で対応、2026年5月追加) |
補助電源 | 補助電源タップ(2026年5月追加) |
Rockwell AutomationはEtherNet/IP In-cabinet SolutionをポートフォリオとしてRoadmapに沿って継続拡張しています。「今後さらに多くのモーター制御コンポーネントへ対応、より深いデータアクセスと診断機能の強化を予定している」RockwellのJimmy Alvarez(ポートフォリオ&ビジネスマネジメントディレクター)は述べており、長期的なスケーラビリティが確保されています。
Logixエコシステムとの統合
EtherNet/IP In-cabinetはAllen-BradleyのLogixコントローラとシームレスに統合されます。ゲートウェイがEtherNet/IPでControlLogixやCompactLogixと通信するため、Studio 5000上での設定・診断が可能です。各デバイスのステータス・診断データ・アラームもLogicコントローラ経由でリアルタイムに取得でき、FactoryTalkとの連携で設備のデータを可視化・分析することもできます。
また、プラグアンドプレイの設計により、コミッショニング・保守・デバイス交換時の設定作業が大幅に簡略化されています。
どんな企業・設備に向いているか
以下に当てはまる場合、EtherNet/IP In-cabinetの導入を検討する価値があります。
- 新規制御盤の設計・製造を行う盤メーカー・OEM
設計段階から採用することで配線工数とコストを削減できます。 - 頻繁に盤の仕様変更・設備改造が発生するエンドユーザー
マルチドロップ構成のため、デバイス追加・変更が容易です - 設備の稼働データ・診断データをリアルタイムで取得したい企業
ハード配線では不可能なデータの可視化がネットワーク統合で実現します。 - 立上げ期間の短縮が競争力に直結するプロジェクト
配線・テスト時間の削減は納期短縮に直結します。 - Allen-Bradley PLCを既に使用している企業
既存のLogixエコシステムに追加の構成変更なく統合できます。
よくある質問 (FAQ)
Q1. EtherNet/IP In-cabinet solutionとは何ですか?
A. Rockwell Automationが2025年5月にリリースした、制御盤内のデバイス間通信をEtherNet/IPネットワークに置き換えるソリューションです。シングルペアイーサネット(SPE)技術で1本のケーブルに電力とデータを統合し、従来の複雑なハード配線を大幅に簡素化します。
Q2. シングルペアイーサネット(SPE)とは何ですか?
A.通信信号と電源を一本のケーブルで同時に伝送する技術です。EtherNet/IP In-cabinet Solutionでは7芯フラットケーブルを使用し、これ一本で盤内の複数デバイスに電力供給と通信接続を行います。
Q3. 配線時間はどれくらい削減できますか?
A. 推奨企画に基づいて導入した場合、従来のハード配線と比較して最大80%の配線時間削減が報告されています。ブラジルのVolga社では組立時間が65%以上削減され、スターターとパネルオペレーターの配線を1時間余りで完了できたという実績事例があります。
Q4. 何台のデバイスまで接続できますか?
A. ODVAの仕様では最大の40ノードまで接続可能です。盤内のネットワークのケーブル最大長は25メートルと規定されています。
Q5. Allen-Bradley以外のPLCと組み合わせられますか?
A.EtherNet/IP In-cabinet SolutionはEtherNet/IPで上位ネットワークに接続するため、EtherNet/IPをサポートするコントローラとの接続が基本となります。Allen-BradleyのControlLogix・CompactLogixとの統合が最も高い親和性を持ちます。
Q6. 既存の制御盤に後付けで導入できますか?
A. 既存のインフラを大幅に変更せずに接続デバイスを追加できる設計になっています。ただし最大限の効果を得るためには、新規盤設計段階からの採用が推奨されます。既存盤への適用については、愛電株式会社までご相談ください。
Q7. 対応デバイスはどんなものがありますか?
A. 現時点ではモータースターター・押しボタン・E100電子過負荷リレー・140MEモータ保護回路遮断機・100-Eコンタクタ(通信モジュール経由)などに対応しています。2026年5月の拡張で対応範囲が広がり、今後もRoadmapに沿って拡張予定です。
Q8. FactoryTalkと連携してデータを可視化できますか?
A. できます。EtherNet/IP経由でLogixコントローラと接続しているため、FactoryTalk HistorianやFactoryTalk Viewと連携して各デバイスの稼働状態・診断データ・アラームをリアルタイムで収集・可視化できます。
Q9. Studio5000で設定・診断できますか?
A. できます。ゲートウェイを通じてLogixコントローラに統合されるため、Studio 5000 Logix Designerからデバイスの設定や診断状況の確認が可能です。
Q10. 盤内スペースの削減効果はありますか?
A. あります。複数氣0ブルを束ねていた従来の配線が1本のフラットケーブルに集約されるため、盤内の氣0ブルスペースが大幅に減少します。より小型の盤で同数のデバイスを収容できる可能性があり、盤の省スペース化・小型化に貢献します。
Q11. CompactLogixと組み合わせた場合も使えますか?
A. 使えます。EtherNet/IP In-Cabinet SolutionはControl Logixどちらとも統合可能です。
Q12. 導入の相談はどこにすればよいですか?
A. 愛電株式会社にご相談を承ってます。製品の詳細説明や、設備規模・既存環境に合わせた導入提案まで対応しています。
まとめ
EtherNet/IP In-cabinetは制御盤内の複雑なハード配線をシングルペアイーサネット(SPE)技術による1本のネットワークケーブルに置き換え、配線時間を最大80%削減するRockwell Autoumationの新しいアーキテクチャです。2025年5月のリリース後、2026年5月には100-Eコンタクタや140ME・E100などモーター制御デバイス対応が拡張され、対象デバイスが着実に広がっています。Allen-BradleyのLogixエコシステムとシームレスに統合できるため、ContorolLogix・CompactLogixを使用している企業は既存環境に追加投資なく導入できます。盤の省スペース化・立上げ期間の短縮・リアルタイムデータの取得という3つの価値を同時に実現できる製品として、新規盤設計・盤改造プロジェクト選択しとして強くおすすめします。


