EtherNet/IPとは?PROFINETやCC-Linkとの違いも解説

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EtherNet/IP (イーサネット・アイピー)とは、標準イーサネット上でCIP (Common Industrial Protocol : 共通産業プロトコル)を実装した産業用ネットワークプロトコルです。工場の機械・PLC・センサー・ドライブなどをつなぐ産業用通信規格であり、特に北米で広く普及しています。名称の「IP」はインターネットIPアドレスのInternet Protocolではなく、「Industrial Protocol (産業プロトコル)」の略です。最初の使用はRockwell Automationが2000年に開発し、現在は国際団体ODVAが管理しています。

EtherNet/IPとは何か

EtherNet/IPの正式名称は「Ethernet Industrial Protocol (イーサネット・インダストリアル・プロトコル)」です。名前にEthernetとあるように、私たちが職場や家庭で使っている標準のイーサネット (IEEE802.3) とTCP/UDPの上に CIP (Common Industrial Protocol) と呼ばれる産業機器向けのアプリケーション層プロトコルを追加することで、工場の制御に必要なリアルタイム通信を実現しています。

IEC (国際電気標準会議) によって「IEC 61158」 および 「IEC 61784」 として国際標準にも認定されており、ODVAに加盟する300社以上のメーカーがEtherNet/IP対応製品を開発・販売しています。Allen-BradleyのControlLogixやCompactLogixはEtherNet/IPをネイティブでサポートしており、北米の製造現場では事実上の標準となっています。

EtherNet/IPの仕組み : CIPとの関係

EtherNet/IPを理解する上で欠かせないのが、CIP (Common Industrial Protocol)という概念です。

CIPとは、産業機器間の通信に共通のルールを定めたアプリケーション層のプロトコルで、機器の設定・制御・診断といった動作をオブジェクト指向のモデルで統一しています。このCIPを、EtherNet/IPはイーサネット上で、DeviceNetはCANバス上でそれぞれ実装しています。異なるネットワークでも共通のCIPを使うことで、機器間の相互運用性が保たれます。

EtherNet/IPでは通信の目的に応じで2つのメッセージ方式を使い分けます。

通信方式

使用プロトコル

用途

暗黙的メッセージング 
(Implicit Messaging)

UDP

PLCとI/O機器間のリアルタイムな周期的データ転送

明示的メッセージング

(Explicit Messaging)

TCP

機器の設定変更・パラメータ読み書き・診断

制御に関わるI/Oデータはリアルタイム性が求められるためUDP、機器設定など確実な到達が必要な通信にはTCPと、目的に応じて使い分ける設計がEtherNet/IPの特長の一つです。

標準イーサネットとは何が違うのか

EtherNet/IPは標準イーサネットのインフラ(LANケーブル・スイッチ・ルーター)をそのまま流用できるため、既存のIT設備を活用したネットワーク構築が可能です。これは、専用ケーブルや専用スイッチが必要な一部の産業用ネットワークと比べて、導入コストを抑えやすいという利点になります。

一方、標準イーサネット自体はリアルタイム保証を持たないため、高精度な同期制御が必要な場合は「CIP Sync」(IEEE 802.1Qav)と呼ばれる時刻同期の仕組みを組み合わせて使います。精密なモーション制御や高速ロボット制御など、μ秒単位の動機が必要な用途ではこの機能が重要になります。

EtherNet/IPは「普通のLANケーブルとスイッチが使える」が「工場の制御に必要なリアルタイム性もカバーできる」という、IT親和性と産業用途の両立を設計思想としています。

主要産業用ネットワーク3規格の比較

EtherNet/IPを理解する上で欠かせないのが、CIP (Common Industrial Protocol)という概念です。

産業用ネットワークには、EtherNet/IP以外にもPROFINETとCC-Linkという主要規格があります。どの規格が広く使われているかは地域によって異なります。

比較項目

EtherNet/IP

PROFINET

CC-Link IE TSN

策定・管理

ODVA

PI (PROFIBUS & PROFINET インターナショナル)

CC-Link協会 (CLPA)

主導メーカー

Rockwell Automation

Siemens

三菱電機

特に強い地域

北米

欧州

日本・アジア

国際標準

IEC 61158 / IEC 61784

IEC 61158 / IEC 61784

IEC 61158 / IEC 61784

通信ベース

標準イーサネット

(TCP/UDP)

標準イーサネット

TSN (時間敏感ネットワーク)

リアルタイム性

CIP Syncで対応

IRT (アイソクロナスリアルタイム)

TSNで高精度同期

マルチベンダー対応

○ (ODVAコンフォーマンス認定)

3つの規格はいずれも国際標準IEC 61158に準拠しており、規格そのものの優劣よりも「自社の設備が多い地域でどれが標準となっているか」が選定の大きな基準となります。北米に拠点やサプライチェーンを持つ企業には、EtherNet/IPが自然な選択肢となります。

Allen-Bradley (Rockwell Automation)とEtherNet/IPの関係

EtherNet/IPはもともとRockwell Automationが2000年に開発した規格であり、その後ODVAに移管されてオープン標準となりました。そのため、Allen-BradleyのControlLogixやCompactLogixにはEtherNet/IPが標準搭載されており、これらのPLCが工場ネットワークの中核を担う北米では、EtherNet/IPが自動的にデファクトスタンダードとなる構図があります。

Allen-BradleyのPLC同士の通信はもちろん、PowerFlex(モータードライブ)・Panel View (HMI)・Stratixシリーズ (産業用スイッチ)といったRockwell Automationの周辺機器もEtherNet/IPに対応しており、同一ネットワーク上で上でシームレスに連携できます。さらにFactoryTalkソフトウェア群とのデータ連携もEtherNet/IPを介して行われるため、現場の制御データをリアルタイムでITシステムへ届けるIT/OT統合の基盤としても機能しています。

2025 ~ 2026年の最新動向

EtherNet/IPを管理するODVAは2025年3月に第23回年次総会を開催し、EtherNet/IPの今後の技術方針として以下のトピックを重点課題として挙げています。

  • CIP SecurityとCRA(EUサイバーレジリエンス法)対応
    • OTネットワークのセキュリティ強化が業界全体の最優先事項となっており、CIP SecurityはデバイスID管理・暗号化通信・脆弱性抑制を含む産業用セキュリティ標準として整備が進んでいます。(CRAとの関係は別記事「EUサイバーレジリエンス法(CRA)とは?」も参照)
  • AI・機械学習との統合
    • 工場内のEtherNet/IPデバイスから収集したデータをAI・MLで分析する活用が広がっています。
  • IPv6対応
    • IPアドレスの枯渇問題への対応としてIPv6への移行が議論されています。
  • 5GとCIP Motion
    • 5G無線通信とEtherNet/IPのモーション制御を組み合わせた無線化への取り組みが進んでいます。
  • CIP Energy
    • リアルタイムのエネルギー監視・最適化をEtherNet/IP上で実現する規格整備が進んでいます。

導入・選定時のチェックポイント

EtherNet/IPの導入・選定で確認すべき主なポイントは以下の通りです。

  1. 既存設備・取引先の規格を確認する
    ・すでに工場内にAllen-Bradley製品が多い、または北米の取引先・親工場でEtherNet/IPが標準の場合は、同規格に統一することで保守・設計の一元化が図れます。
  2. ODVAコンフォーマンス認定製品を選ぶ
    ・ODVAの認定を受けた製品はEtherNet/IP仕様への適合が確認されており、異なるメーカー機器間でも相互運用性が保証されます。
  3. ネットワークポロジーを計画する
    ・EtherNet/IPはスター型・リニア型・リング型 (DLR : デバイスレベリング)など複数のトポロジーに対応しています。CompactLogix 5380はDLRをサポートしており、リングとポロジーによる冗長化で可用性を高めることができます。
  4. セキュリティ(CIP Security)の要件を確認する
    ・OTネットワークのサイバーセキュリティへの要件が高まっている現在、CIP Securityへの対応状況も機器選定の重要な判断材料になります。

よくある質問 (FAQ)

Q1. EtherNet/IPとは何の略ですか?

A. Ethernet Industrial Protocol (イーサネット・インダストリアル・プロトコル)の略です。名称の「IP」はInternet Protocol (インターネットプロトコル)ではなく、Industrial Protocol (産業プロトコル)を指します。

Q2. EtherNet/IPは普通のLANと何が違うのですか?

A. 物理的なケーブルやスイッチは標準イーサネットと同じものが使えます。違いはアプリケーション層にCIP (Common Industrial Protocol)という産業機器向けの制御プロトコルを追加している点です。これにより、PLCとセンサー・ドライブ・ロボットなど産業機器を制御用ネットワークとして接続できます。

Q3. EtherNet/IPとPROFINETはどちらが優れていますか?

A.技術的な優劣より地域標準が重要です。EtherNet/IPは北米で、PROFINETは欧州で広く普及しており、自社の生産拠点がある地域でどちらが標準となっているかが選定の主な基準となります。

Q4. EtherNet/IPはAllen-Bradley専用のネットワークですか?

A. いいえ。もともとRockwell Automationが開発した規格ですが、現在はODVAがオープン標準として管理しており、300社以上のメーカーがEtherNet/IP対応製品を提供しています。Allen-Bradley以外の機器とも接続可能です。

Q5. CIPとEtherNet/IPはどう違うのですか?

A. CIPはメーカーや通信媒体に依存しない共通のアプリケーション層プロトコルです。EtherNet/IPはそのCIPを標準イーサネット上で実装したものを指します。CIPはDeviceNetやControlNetなど他のネットワーク上でも使われています。

Q6. EtherNet/IPとCC-Linkの違いは何ですか?

A. 主な違いは地域標準と管理団体です。EtherNet/IPは北米中心でODVAが管理し、CC-LinkはCC-Link協会(三菱電機が主導)が管理し日本・アジアで広く使われています。技術的には両者ともIEC 61158の国際標準に認定されており、次世代版のCC-Link IE TSNはTSN(時間敏感ネットワーク)を採用しています。

まとめ

EtherNet/IPはRockwell Automationが開発し、現在はODVAが管理するオープンな産業用ネットワーク規格です。標準イーサネットの上にCIPを実装することで、工場の制御に必要なリアルタイム性とITネットワークとの親和性を両立しています。北米の製造業では事実上の標準となっており、Allen-BradleyのPLC・ドライブ・HMIからFactoryTalkソフトウェアまで、Rockwell Automationのエコシステム全体の通信基盤として機能しています。2025〜2026年はCIP Security・AI連携・CRA対応という新たな技術トレンドが加わり、産業用ネットワークとしての役割はさらに広がっています。

愛電株式会社RA事業部
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